「まったく・・・ お前は下駄箱の部屋に早めに入っていったのに、出てくるのは最後だ。 もっと、人を押しのけてでも生きて行かなきゃだめだ」
運動会を見にきた母が、子どものころの自分に言った。 当時は子どもゴコロにむくれたりしたものだが、今はそうは思わない。
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母は、裕福でもない、まあ、普通の農家に生まれた。 (今の感覚でいうと「貧乏」でしょう)
「長女だから学歴も必要ない。ノラを手伝え。」 と親に言われ、従わざるを得なかったそうな。中学校しか出ていない。 従わざるを・・・というよりは、そのころは当然の感覚だったのかも。
「妹、弟たちはみんな高校、大学まで行かせてもらってねぇ・・・あたしは長女だから」 「パートで働き出すようになってからも、中学卒というだけで悔しい思いをした」 というような話は何度も聞いた。
今になると「人を押しのけてでも・・・」というのは、 「自分が出来なかったことをお前はできるようになれよ」と言っていたような気がする。 母は人を押しのけられない性格。 「こんな気苦労を背負わずに強く生きたほうがいいぞ」と言っていたんだと思う。
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現在、朝の比較的混んでいる電車に乗るとき、ホームに着いてドアの開いた車内を見て、 「あ、降りる人もう居ないな」と確認してから電車に乗る。 そうすると乗り込むのが最後のほうになったりする。 その間、自分の後ろで待ってた人がどんどん途中で乗り込んでいくのだけど・・・
ま、母ちゃん。そんなんでも生きていけるもんだ。東京は。 | |