'98.2.11
 VT発見

 帰ってきたVT250Z
 建国記念日。VTが盗まれてからちょうど10日目だ。ほとんどあきらめてはいたが、一応現場周辺を探してみる事にした。現場近くのバイク屋、というかバイク屋の隣のレーシングチームへ。事情を説明していろいろ教えてもらった。

「いつぐらいのVT? ああそんなに古いの。じゃあいたずらだね。新らしいバイクだと計画的に盗んでパーツとかバラして売るパターンとかあるけど、古いバイクなんかは悪い中学生とかが一晩遊んで乗り捨てちゃうのが多いみたい。この辺は多いみたいよ。それだったら、見つかったとしたらイグニッションの所を直すだけだから、そうね2-3万円ぐらいかな? この前もそういう人いたよ。」

親切に教えてくれた。近くの河原の土手によく乗り捨てられていると聞いて行ってみる。やっぱり無い。そううまくは行かないなと思いながら帰宅。

 「お宅のバイクが見つかりました」
 家に帰り着いてから数時間後、電話が鳴った。警察からだ。

「日向さんですか。警察のものですが、盗難届けの出ていたバイクが見つかりました。」

なんとなんと、偶然というか、ちょうどバイクを探しに土手をウロウロしている間に電話をくれていたらしい。発見されたのもちょうどその土手あたりだったらしい。

「私もバイクに乗ってましてね。お気持ちよくわかります。実際にご覧になって損傷とかにガッカリされるかも知れませんが・・・。私は今警察署にいるんですが、バイクは発見された近くの交番に置いてあるので、そこで待ち合わせしましょう。」とおまわりさん。

非常に感じのよい方で、盗難届けを出した所の警察官があまりに感じが悪かったのと対照的。こんな人もいるんだなぁと思うと少しホッとした。動くかどうかわからないが一応ヘルメットを持って急いで飛び出した。

 久々のご対面
 動かなかった時の事を考えて、数時間前にいろいろ教えてもらったバイク屋の電話番号をメモして交番へ。おまわりさんは本当に良い人だった。

「あんまりショックを受けないでね」とご対面。

おお!全然かわっていない。イグニッションの鍵穴が変形している。タンクキャップの鍵穴も変形している。ブレーキレバーが折れている。シートが少々切られている。ナンバープレートが若干曲げられている。・・・とそんなところだ。

「どう?がっかりした?」とおまわりさん。「いや。充分です。」と私。

「クラッチレバーも折られちゃってるし・・」「あ、それ最初からです。ブレーキレバーはやられたみたいですね」

「前のウィンカーなんかほら、取れてるのをビニールテープでグルグル止めてある・・」「ああ、それは自分でやりました。」「・・・」
心配してくれていたおまわりさんは少し拍子抜けしたようだった。

強引にイグニッションを回して始動を試みたがエンジンは復活しない、というよりはバッテリーがあがってしまっているようだ。交番の電話を借りてバイク屋に電話。引き取りに来てもらうことにした。待っているあいだもそのおまわりさんはとても親切だった。

「ナンバーが品川だけど、前に住んでたとかですか? 私も昔、品川ナンバーでしてね。それでこんなところの土手に品川ナンバーなんて不審だな、と思って車体番号を照会してみたら盗難届けが出てたから・・。ホント良かったですね。」

ああ、なんていい人なんだ。と思いながら、引き取りにきたバイク屋の車に乗って交番を後にした。引き取りに来てくれたバイク屋のアンチャンがまた感じがよかった。自分よりずっと年下であろう2人なのだが、礼儀正しいし、車内でもいろいろ気を遣って話をしてくれる。盗まれた時にはその地域全体を「ガラが悪い所だ」とかレッテルをはりそうになっていたが、それは違う(当然のことだが)。とてもよい気持ちになった。

修理代約2万円。VTは不死鳥のように蘇り、再び私の元に舞い戻ったのである。
ウィンカーはまだビニールテープ巻だが。